リーダーシップ理論は、大まかに(1)リーダーシップ特性理論、(2)リーダーシップ行動理論、(3)リーダーシップ条件適合理論、(4)近年のリーダーシップ論の流れで展開されてきました。変革型リーダーシップについて研究された現在では、リーダーシップの研究は行き詰まっているとも言われています。
(1)リーダーシップ特性理論(1940年代以前)
この理論は、優れたリーダーが共通して持っている才能や資質、性格などを明らかにしようとするもので、リーダーシップはリーダーの特性や資質で決まるという考え方です。リンダール・アーウィックは優れたリーダーに共通する特徴として、①勇気、②意志の力、③心の柔軟性、④知識、⑤誠実、の5つを挙げています。しかし、この理論は応用範囲が狭く、優位性が無いことを指摘されています。
(2)リーダーシップ行動理論(1940年代~1960年代)
この理論は、「リーダーとは作られるものである」という前提のもと、優れたリーダーとそうでないリーダーの行動の違いに着目した考え方です。他にもリーダーシップをマトリクスで表し、単純化モデルとして活用された2次元論というものもあります。三隅二不二が提唱したPM理論やブレイク&ムートンらによって提唱されたマネジリアルグリッド論が有名です。
(3)リーダーシップ条件適合論(1960年代後半~1970年代)
リーダーシップの成功要因は、その時の状況や環境によって変化するという考え方です。有名なものに、フィードラーのリーダーシップ状況適応論とSL理論があります。
(4)近年のリーダーシップ論(1970年代~)
市場の環境変化やビジネスの複雑性など不確実な状況下において、成功へと導くためのリーダーの行動に焦点が当てた変革型リーダーシップ論や「一般人とは異なる神業的で、ずば抜けた能力や資質が備わっている人間こそがカリスマ型リーダーである」と定義した相手に影響を与える行動モデルを提唱するカリスマ型リーダーシップなどがあります。
しかしながら、統一されたリーダーシップの定義は存在しないというのが現状です。リーダーシップの研究の歴史は古く、時代に応じてリーダーに望まれるリーダーシップの定義は変化し続けています。
100本の論文があれば100通りの定義が存在するとか、子育て同様に掴みどころのない複雑さとか、リーダーシップは社会学の領域において最もよく研究されているにも関わらず、最もよく理解されていない概念である、とも言われています。
ここで重要なのは、技術士におけるリーダーシップとは何か?ということです。
二次試験の口頭試験では、上記リーダーシップ研究の変遷を理解したうえで、技術士のリーダーシップはどのように定義されているのを理解する必要があります。
【技術士のリーダーシップ定義】
・業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
・海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。